【潜入レポート】“魔法の液剤”がマシンのタイムを縮める!…サーキットで施工するプロショップの店主に密着 | flipify- flipify.info

【潜入レポート】“魔法の液剤”がマシンのタイムを縮める!…サーキットで施工するプロショップの店主に密着

特集記事 インタビュー

画期的なコーティング剤がサーキットで話題に
  • 画期的なコーティング剤がサーキットで話題に
  • 日本を代表するサーキットの一つ富士スピードウェイ
  • TAOレーシングのマシン
  • エキゾーストサウンドを鳴らして出陣
  • 本番さながらの調整がピットでも行われる
  • スタッフの押しがけによりコースに復帰
  • TWCが持つ静電効果を目の前で実演(黄色がTWCを施工したもの)
  • 立ち上がりやストレートの伸びに大きく影響する
クルマをより速く走らせるため、自動車技術の粋が結集するモーターレース。0コンマ1秒にかける人々の努力がクルマをより早くし、そしてレースを盛りたてる。そんな現場で、ある“装備”を携えてレーシングカーに施工するディテイリングショップの代表がいる。一体、何のため? 今回そのヒミツを探りに、編集部はレースの現場を訪れた。このプロショップ店主が行う取り組みが、今レース界でにわかに注目を集めている。

◆ディテイリングショップ店主がサーキットで施工する理由

7月某日。静岡県にある日本有数のサーキット・富士スピードウェイで、同地を舞台に行われるモーターレース「インタープロトシリーズ(以下、IPS)」のテスト走行会が実施された。会場はあいにくの曇り空に包まれたが、垂れ込めるぶ厚い雲を突き破らんばかりのエキゾーストサウンドが豪快に鳴り響いていた。時速300キロ近いスピードで次々とホームストレートを駆け抜けていくクルマ達。そしてそれを支えるため、ピットでは各チームのメカニック達が入念にマシンの調整を行っている。

日本を代表するサーキットの一つ富士スピードウェイ

空気抵抗を“無視”してサーキットをぶっちぎる

本番さながらの調整がピットでも行われる

そんなピットの一つに、クロスでボディを“拭いている”男性の姿があった。それが埼玉県でディテイリングショップを営む、株式会社小鴨商事の白石圭亮代表だ。普段、一般ユーザーの愛車の美しさを守っているショップの代表が、どうしてサーキットのピットで作業しているのだろうか?

その答えは手に持たれたスプレーボトルの中に隠されている。ボトルから吹き出された液体を、クロスでボディの表面に塗布していく。全体に施されたことが確認されると、マシンは颯爽とコースに飛び出していった。一見すると洗車のようにも見えなくはないが、そういうわけではない。実はこの液体がタイム短縮のカギを握る、重要な“装備品”の一つなのだ。

さっと塗ることで静電気を抑える効果をもたらす

ヒミツはこのスプレーボトルのなかにある

◆タイムの短縮を実現するコーティング剤

そのボトルの中身の正体は「コーティング剤」だ。普段ショップなどで施工される時はクルマの美しさを維持することが目的とされる溶剤だが、ここでの用途は一般のそれとは少し違う。

このコーティング剤は小鴨商事が開発した「Two Way Coat(ツーウェイコート、以下TWC)」という製品で、はっ水作用をもたらすのと同時にもう一つ、『静電気の発生を抑える』という効果をボディに与える。そしてこの静電気の抑制が、タイムに大きく関わってくるというのだ。

走行中のクルマは、ボディと空気が摩擦することで発生する静電気に包まれており、それが車体に空気抵抗を生み出す。1000分の1秒を争うレースにおいては、このわずかな空気抵抗すらタイムロスの原因になる。そこで有効になるのがTWCというわけだ。この日、白石氏はIPSに参戦する「TAO-Racing Team(有限会社高橋設計 代表取締役高橋照夫氏がチームオーナー兼ドライバーを務める)25号車」のピットで施工し、その効果をチームにもたらしていたのだ。

立ち上がりやストレートの伸びに大きく影響する

理屈だけでなくデータも、その効果を裏付けている。走行時の数値を見ると「(TWCを施工すると)平均時速が3キロ、最大で5キロ速くなった」(白石氏)という効果が出ているそうだ。データロガーが証明するこの結果が評判を呼び、白石氏のもとには現在IPS以外にも四輪、二輪、飛行機など、カテゴリーを問わず“レース参戦”へのオファーが続いている。

◆プロレーサーも太鼓判!

この日ハンドルを握ったプロレーサーの三笠雄一選手もその効果に太鼓判だ!「TWCを塗ったクルマに乗ると、シフトアップのタイミングがいつもより早くなるんです。これは回転数が早く上がっていることを意味する。つまり、ストレートが伸びている、もしくは立ち上がりが早くなっているということです」と実感を口にする。

さらに、この日のコース上での感覚を「普段クルマが並んだ時、サイドスリップ(車体横に発生する風)の影響で、相手の車体に引き寄せられる力をすごく感じる。でも(TWCを)塗った後は、その力が弱い。風の抵抗をあまり受けていないんでしょうね」と表現した。神経を研ぎ澄ましコースを走るドライバーの生の声は、何よりも大きな説得力を持つ。

三笠選手もTWCの効果に太鼓判を押す

「ドライバーが主役のレース」が目指されるIPSでは、全チーム統一規格のオリジナル車両が使用される。こういったワンメイクレースでは、各車両の性能の違いは小さいため、ドライバーの技術はもちろんのこと、細かい微調整の部分が勝負を左右することも多い。コーティング剤も一つの武器になるのには、こういう理由がある。この他にも飛行機レースで「3ノット(約5.5キロ)」時速が上がったり、カート用のヘルメットに塗ると「風切音が小さくなった」などの声が白石氏のもとには続々届いている。魔法でもかけたかのような様々な効果が、このコーティング剤によって生み出されているのだ。

走行後の三笠選手

三笠選手にコーティングの効果を聞く白石氏

◆トークショーでの一言がヒントとなり商品が誕生

今やサーキットで引く手あまたという状況のTWCだが、商品誕生は何気ない一言がきっかけとなった。昨年11月、白石氏は一般客として、ある自動車メーカーのトークショーに参加した。そのなかで、壇上から「コーティング剤で静電気を抑えられたらいいんですけど」という言葉があったそうだ。その声に思考が反応した。

「それを聞いた時に『これ、作れる』と思ったんです」

トークショーが終わるとすぐに製作に取り掛かった。理論とイメージははっきりと頭に描かれている。あとはそれを形にするだけだった。そして数日後、新たなコーティング剤が生み出されていた。

TWCがレースで使われるようになったのも、「たまたま(自社の)お客様のなかにIPSのドライバーが居て、その人に『レースで試してみない?』と誘われた」からだそうだ。「結果はどうなるか分からないが、製品テストをさせてもらえるなら…」という気持ちでピットに入れてもらい、実際にマシンに塗布する機会を高橋代表に与えられた。すると、タイムが縮まった。

さらに高橋代表は「施工前に比べると汚れも付着しづらく、タイヤカスも取れやすくなった。決して早く走るためだけの薬剤ではない」と、スピード面だけでなく、TWCのトータルバランスも高く評価している。

“日本一の女性ドライバー”と名高い小山美姫選手と談笑するTAOレーシング・高橋代表

白石氏は、このような結果を見せた今でも「(TAO-Racing25号車が走るたびに)テストを行わせてもらえるのはありがたい」とピット内の作業は無料で請け負っている。休みを返上してまでサーキットに足を運び、研究の日々は続いている。

◆カー用品量販店の棚に並ぶ商品を目指して

TWCは現在、特許申請中で、承認が下り次第「市販化の準備を進める」そうだ。一般車両でも静電気を抑えることで、ホコリの付着が大幅に減るなど、多くの効果がもたらされる。液剤をクロスで塗るだけという手軽さや、一度の施工で『はっ水』と『静電気抑制』の効果が3~4ヵ月持続するというのも一般向けだ。すでにいくつかの大手メーカーも興味を示しているそうで、発売されたら話題を独占しそうな雰囲気が漂っている。

白石氏はピット作業の合間を縫って、TWCの効果をアクリル容器に発泡スチロールの玉を入れた手作り装置を使い実演してくれた。片方はTWCを塗った容器で、もう片方は何も塗らないもの。それに摩擦をかけひっくり返すと、液剤を施していないものは静電気が発生しているため玉が下に落ちない。一方、施工済みの容器内にある玉はスッと下に落ちた。まるで手品でも見ているかのような現象が目の前で展開されたのだ。百聞は一見にしかず。皆さんにも本記事内の動画で、その効果を体感してもらいたい。

製品の実演はまるで手品のようだ

TWCが持つ静電効果を目の前で実演(黄色がTWCを施工したもの)

「まずは一般ユーザーに届けられるよう準備を進めたいと思っています。そして将来的には、当たり前のようにカー用品量販店の棚に並んでいるような商品を目指して開発を続けます!」

白石氏は笑顔でそう宣言した。関東圏の実力派プロショップが集まる「東京ディテイリング倶楽部」に籍を置き、日々技術の追求を行うかたわら、一般ユーザーにも気軽に役立つ商品の開発にも余念がない。

カーディテイリングの世界で勝負する者が輝く舞台は、何も自社のブースのなかだけではない。ピットの中で、全身に汗を流しながら施工する白石氏の姿を見て、そんなことを強く感じた。「はっ水効果」と「静電気抑制」という2つの効果を持つ「Two Way Coat」は、今後どのような道を開拓していくのだろうか。その可能性は、無限に広がっている。



◆…インタープロトシリーズ(IPS)…◆
2013年に始まったカーレースで、富士スピードウェイを舞台に12台が参戦し、年間8戦が実施される。「『車両』の争いよりも『ドライバー』の争いに焦点を当てる“ヒューマンスポーツ”を目指す」ことが掲げられており、車両はIPS専用に設計された国産のオリジナル車両“kuruma”が使用される。最大の特徴はプロドライバーとジェントルマンドライバー(アマチュア)の2名が同じ車両を使用し順位が争われること。ドライバーの素晴らしい勝負を見せることを目的に、熱戦が繰り広げられる。1995年の「ルマン24時間レース」で日本選手初の総合優勝を果たした元レーシングドライバーの関谷正徳氏が代表を務める。次戦は9月16日(土)、17日(日)に行われる。
《間宮 輝憲》

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